マラソンにプロテインは必要?持久系スポーツ向け摂取目安・タイミング・種類の選び方を解説

プロテインは、マラソンやランニングなど持久系スポーツに取り組む人の間でも、コンディション管理やパフォーマンスの向上、栄養補助などを目的に取り入れるケースが増えています。

たんぱく質は筋肉だけでなく、内臓や血液、ホルモンなどの構成成分であり、走るためのカラダ全体を支える重要な栄養素です。一方で、ランニング量が増えるほど消費量も増え、食事だけでは必要量を安定して補えない場合があります。長距離練習や大会後のコンディショニングの面でも、たんぱく質は重要な役割を担っていると考えられます。

本記事では、マラソンランナーなどの持久系スポーツに取り組む方にとってのたんぱく質の役割や必要量を整理したうえで、プロテインの摂取タイミングや種類の選び方、アミノ酸との使い分けまでをわかりやすく解説します。

日々の練習を継続し、安定した走りを目指したい方はぜひ参考にしてください。

東郷克彦

東郷克彦

薬学博士・MBA・薬剤師免許保持。
岡山大学大学院修了後、製薬会社で薬物動態研究に従事し、ヒト細胞研究を推進。大阪大学大学院にて薬物代謝酵素の遺伝子変異研究で博士号取得。
研究と経営の融合に挑み、科学の成果を社会価値へつなげることに情熱を注ぐ。
座右の銘は「情けは人の為ならず」。

目次

マラソンなどの持久系スポーツにプロテインが必要とされる理由

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マラソンランナーなどの持久系スポーツにとってプロテインが必要とされる1番の理由は、カラダづくりではなく、大会や日々のトレーニング後のリカバリーのサポートを通じて、コンディションを整える点にあります。

ランニングでは一歩ごとに大きな着地衝撃を受けるため、走行距離が伸びるほど筋繊維への負担は蓄積されます。また、近年普及している脂肪適応、低炭水化物ダイエット時のトレーニングは炭水化物の代わりにカラダの脂肪やたんぱく質がエネルギー源として使用されやすくなり、十分なたんぱく質が補給できていない状態では、カラダが筋肉を分解してエネルギーを補おうとし、コンディショニング不良やパフォーマンスの低下につながる可能性があります。そのため、たんぱく質をしっかり補給することが重要になります。

その他にも、たんぱく質摂取により持久トレーニングへの適応をサポートしたり、トレーニング内容(休養日含む)に応じて柔軟に必要量を調整したりなどの目的で、プロテインが活用されています。

食事のみでたんぱく質の必要量を満たそうとすると、脂質やカロリーの過剰摂取になりやすいことから、プロテインを活用することで、体重管理を意識しながら効率よくたんぱく質を補給でき、走り続けるためのカラダづくりにつながります。

【目的別】持久系アスリートのプロテイン摂取目安量

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最新の研究報告(Witardら、2025)によると、本格的なマラソンランナーなどの持久系アスリートが1日に必要とするたんぱく質の目安量は、以下のとおりとされています。

  • 大会シーズン(高強度・高ボリュームのトレーニング期):体重1kgあたり1.8g   
    *ただし、低炭水化物トレーニングを行う場合は2.0g以上も選択肢
  • 休養日:体重1kgあたり2.0gもしくはそれ以上
  • オフ期:体重1kgあたり1.8~2.0g

食事摂取基準(2025)におけるたんぱく質摂取の成人における推奨量が体重1kgあたり1.0g前後ですので、マラソンランナーなどの持久系アスリートは約2倍近くの量が必要となります。特に、脂肪適応(ファットアダプテーション)や低炭水化物トレーニング時にはたんぱく質が消費されやすくなるため、さらに多くの量を摂取することが必要です。

休養日の目安量がシーズン期より多いことを意外に感じる方も多いでしょう。トレーニングのカラダへの刺激は24~48時間程度持続するとされているため、休養日はまさに前日までのトレーニング負荷からのリカバリーと再構築が進む局面であり、そのためたんぱく質の需要が継続的に高いとされています。休養日=たんぱく質需要の高い日、と見なすことが重要です。

なお、運動強度のレベルが低かったり、運動頻度も少なかったりする方は、上記のとおりたんぱく質を摂取するとカロリー過多で意図せぬ体重増加につながる可能性もあるため、自身の運動内容と照らし合わせて、調整いただく必要があります。

マラソンなどの持久系アスリートにおすすめのプロテイン摂取タイミング

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筋力トレーニングを行う際、トレーニング後できるだけ速やかに(目安として45分以内)プロテインを摂取することが、効率的なカラダづくりに繋がると広く認識されてきました。

これは、運動直後の「ゴールデンタイム」と呼ばれる期間に、カラダづくりが活発化すると考えられているためです。

しかし近年では、運動によるカラダへの刺激は24時間から48時間程度続くことが明らかになり、プロテインの摂取タイミングに過度に固執する必要はない、という見解も出てきています。

摂取タイミングよりも、1日全体のたんぱく質摂取総量を確保すること、そして、それを一日の中で数回に分けて摂取する(分配摂取)ことが、より重要であると指摘されています。

持久系スポーツの場合、瞬発系スポーツとはたんぱく質摂取の主な目的が異なるため、摂取タイミングにこだわりすぎるよりも、まずは1日あたりのたんぱく質摂取量を適切に管理することに重点を置くのが望ましいでしょう。

ただし、1度に大量のたんぱく質を摂取するのではなく、通常の3回の食事を含め、1日を通して摂取タイミングをある程度均等に分散させ、カラダへ継続的にたんぱく質を供給し続けることを意識しましょう。

マラソンなどの持久系スポーツでプロテインを摂取する際の注意点

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ここでは、マラソンなどの持久系スポーツでプロテインを摂取する際の注意点について紹介します。

  • プロテインの過剰摂取に注意
  • レース前ではなくレース後の摂取がおすすめ

注意点を事前に確認し、トラブルを防止しましょう。

プロテインの過剰摂取に注意

プロテインはカロリーを含む食品であり、飲めば飲むほどよいものではありません。

食事量を変えずにプロテインを追加すると、カロリーオーバーとなり体重増加を招く可能性があります。

利用されなかったたんぱく質は分解・排出の過程で内臓に負担をかけることもあります。運動強度や頻度などに応じて摂取量を調整し、必要な分だけ取り入れる意識が大切です。

レース前ではなくレース後の摂取がおすすめ

マラソン大会など当日におけるプロテイン摂取は、タイミングに注意が必要です。

たんぱく質は消化に時間がかかるため、スタート直前に摂取すると胃もたれや腹痛などの原因になることがあります。レース前は、速やかにエネルギー源となる炭水化物を中心にするのが基本です。

一方、ゴール後はカラダが大きなダメージを受けており、栄養補給が重要です。走り終えた後、プロテインを摂取することで、リカバリーを意識したコンディション調整に役立てられます。

【マラソンなどの持久系スポーツにおすすめ】プロテインの種類・選び方

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ここでは、マラソンなどの持久系スポーツをする人が目的に応じて選ぶべきプロテインの種類とそれぞれの特徴について紹介します。

  • ホエイプロテイン|素早い栄養補給におすすめ
  • カゼインプロテイン|長時間の栄養補給におすすめ
  • ソイプロテイン|ウエイトコントロール目的におすすめ

自身の練習量や生活リズムを踏まえ、必要な場面で適したプロテインを選びましょう。

ホエイプロテイン|素早い栄養補給におすすめ

練習直後の栄養補給を重視するマラソンランナーには、吸収の速いホエイプロテインが適しています。牛乳由来のホエイは、摂取後およそ30分〜3時間で体内に吸収されるとされており、ランニングで負担を受けたカラダへ速やかにアミノ酸を届けやすい点が特長です。

乳製品でお腹の不調を感じやすい場合は、乳糖を分解したホエイプロテインや、乳糖や脂質を極力除去したWPI製法の製品を選ぶことで、飲みやすさにも配慮できます。

カゼインプロテイン|長時間の栄養補給におすすめ

食間が長い場合など、長時間にわたりたんぱく質(アミノ酸)をカラダに供給したい時には、吸収がゆっくり進むカゼインプロテインが役立ちます。カゼインは胃の中で固まりやすく、約6〜8時間かけて徐々に吸収される点が特長です。

就寝中は栄養補給ができないため、体内のアミノ酸量が低下しますが、就寝前にカゼインを摂取することで、睡眠中も持続的にアミノ酸が供給されやすくなります。

食事の時間が不規則な時や、日中のたんぱく質摂取が不足している際などに取り入れることで、翌日のコンディションを意識した栄養管理が行いやすくなるでしょう。

ソイプロテイン|ウエイトコントロール目的におすすめ

体重管理を意識するランナーには、腹持ちのよいソイプロテインがおすすめです。大豆由来の植物性たんぱく質であるソイは、消化・吸収が比較的ゆっくり進むため、満腹感が持続しやすい点が特徴です。

間食時や食事の補助として活用することで、余分なカロリー摂取を抑えながらたんぱく質を補給しやすくなります。また、乳製品が体質に合わない人や植物性食品を重視するランナーにとっても選びやすい選択肢です。

運動直後はホエイ、普段の食事管理にはソイといった使い分けがしやすい点もメリットです。

アミノ酸(BCAA/EAA)とプロテインの使い分けもおすすめ

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ここでは、プロテインとアミノ酸サプリメントの違いを理解し、マラソンなどの陸上競技を例にシーンごとに使い分けるテクニックについて紹介します。

  • プロテインとアミノ酸の役割・吸収の違い
  • 走る前・レース中|アミノ酸がおすすめ
  • 走った後|プロテインがおすすめ

それぞれの特性を理解し、目的に応じて選択しましょう。

プロテインとアミノ酸の役割・吸収の違い

プロテインとアミノ酸の主な違いは、主に吸収スピードと消化の工程です。

プロテインは摂取後に消化・分解され、アミノ酸となってから体内に吸収されるため、一定の時間がかかります。一方、アミノ酸は分解された状態で摂取できるため、比較的早く血中に届きます。

この違いにより、速やかな補給が必要な場面ではアミノ酸が有利となり、量をしっかり補いたい、ならびに長時間カラダにアミノ酸を供給したい場合にはプロテインがおすすめです。両者を併用することで、それぞれの強みを活かした補給が可能になります。

走る前・レース中|アミノ酸がおすすめ

走る直前やレース中の補給には、消化の負担が少ないアミノ酸がおすすめです。

プロテインは消化が必要なため、運動前に摂取すると胃腸への負担が大きくなる場合があります。その点、アミノ酸は消化の工程を基本的に必要としないため、運動中でも取り入れやすい点が魅力です。

運動前や運動中にアミノ酸を摂取することで、体内のアミノ酸濃度を保ちやすくなり、長時間の走行中もカラダの消耗を意識した補給が行えます。レース中の補給ポイントでも活用しやすい方法です。

走った後|プロテインがおすすめ

練習やレース後のリカバリーを目的とする場合は、プロテインの活用が適しています。

運動後はまとまった量のたんぱく質補給が必要です。アミノ酸は少量ずつの補給には向いていますが、必要量を確保するにはコストがかかりやすくなります。また、アミノ酸は体内で長時間保持されないため、長時間の栄養補給が必要な運動後のシーンには消化吸収に時間のかかるプロテインの方が適しています。

プロテインであれば、比較的手軽に十分な量を摂取でき、総合的な栄養補給にもおすすめです。運動前後で役割を分けて使うことで、無理のないリカバリーが行いやすくなります。

まとめ

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プロテインは、マラソンランナーなどの持久系スポーツをする人にとって、走り続けるカラダづくりを支える「たんぱく質」を効率よく補給できる食品ですが、飲めば持久力が上がるような万能なものではありません。

大切なのは、自分の練習量や疲労度、食事内容などを把握したうえで、不足しやすいタイミングを補う目的で取り入れることです。

運動量や体重管理の考え方は人によって異なるため、必要量や種類を一律に考えるのではなく、一人ひとりに合わせて調整する視点が重要です。プロテインはあくまで食事の補助として位置づけ、無理なく継続できる形で活用することが、安定したパフォーマンスへの近道といえるでしょう。